3月も終わりに近づき春の気配になってきましたが、皆さまは健康にお過ごしでしょうか。
通常であればそろそろ4月中の作業の計画を立てているところで、お問い合わせも増えてくる時期ですが、その前に今年の状況について幾つかお知らせをさせていただきます。
まずは、今シーズンも会員のお申し込みをいただきました常連のお客さまに心から御礼を申し上げます。
オフシーズンの間も、毎年変わらずこの小さな温泉を支えてくださっているお客さまのことをふと思い出し、湯守になって良かったと感じておりました。
しかしながら結論から先に申し上げますと、今シーズンの営業は極めて厳しい状況です。そして今シーズン営業できなければ、ふくろふ乃湯はそのまま無期限休業になることと思います。
ふくろふ乃湯は温度の低い源泉を加温して掛け流しでお客さまに提供しておりますが、これは温泉の提供方法としては最も大変な方式です。
それを承知でここを引き継ぎ、コストとのバランスを取りながら、限られた条件の中でいかに良いお湯をお客さまに提供できるかを日々考えながら過ごしてきましたが、その思いをご理解くださり、また評価してくださるお客さまがたいへん多いことに心強さを感じていました。
一方で、常連のお客さまもよくご存知のように日帰り入浴だけで温泉施設を維持するのはたいへん難しいことです。
日帰り入浴だけで健全な経営をしようとするなら、①施設の規模に関係なくとにかくお客さまをお入れする、②入浴料を値上げする、③掛け流しの方式をやめる、というのが現実的な方法になると思います。実はそのいずれもお客さまファーストではありません。
先代のやり方をそのまま踏襲していた最初の3年は①の傾向が強かったのですが、初めて来られる方のほとんどが一度きりで、常連さんまで足が遠のくという悪循環になっていました。そのためロッカーの数を減らし、人数制限を行って施設の大きさに見合った人数でゆっくり入っていただくよう方針転換しております。
またお客さまの数が増えると、(昨年も度々ありましたが)汚されたり壊されたりしてその日の営業を取りやめざるを得ないようなトラブルも増えてしまいます。
②に関しては大人のお客さまの入浴料を50円値上げさせていただきましたが、定期的にお越しいただくにはそこが限界だろうと判断しております。そういうこともあって昨年会員制を導入しましたが、多くのお客さまがご賛同くださり大変助かりました。
③については、循環ろ過の設備を導入するなら建物ごと新しく建て直すほどの大掛かりな工事と莫大な設備投資が必要になります。残念ながらそれらを調達する能力はありませんし、何よりもモール温泉を循環ろ過・殺菌すると化学変化により発がん性物質が発生することがよく知られております。癒しを求めて来てくださるお客さまに逆のものを提供して対価をいただくことは私にはできません。
お客さまが一定数以上来られないと成り立たない業種であるにもかかわらず、一定数以上来られるとお客さまの満足度が下がるという板挟みの状態をどの日帰り温泉施設も経験しています。それに加えて使用している温泉の条件があります。もともと温度が高ければもっと楽なのですが、ふくろふ乃湯の場合は4つの湯船にお湯を満たすだけで売り上げの約7割が失われます。また、年々修理にかかる費用も増えています。
ここで公開できないことも含め、さまざまな壁を感じながらもお客さまに喜んでいただけるよう可能な限り良いお湯を提供し、当別町の他の場所にも足を運んでいただけるようなハブになりながら、細く長く営業を続けるためいろいろ工夫を重ねてきたつもりでおります。それもお客さまのご理解あってのことですので、上記のような状態で先代より長い6シーズンも営業を続けてこられたのは奇跡だと思います。
今シーズンのことに話を戻しますが、昨年と比べてサポーター会員のお申し込みが少なく、さらに新型コロナウイルスが世界中で脅威となっている状況です。北海道は収束しかけている気配になってきましたが、関東の状況を見る限り(北海道で収束するかに関係なく)政府が緊急事態宣言を出す方向に向かうのだろうと予想しています。
そのため現状のままでは今シーズンの準備を始めることができません。昨年はお客さまのお陰で本当に奇跡のようなことが起きて営業を始めることができましたが、毎年お客さまにサポートをお願いするわけにもいかず、奇跡はそんなに起こらないことも重々承知しております。
この冬はふくろふ乃湯の状況と世の中の状況を見ながら、お客さまのために何ができるかを考えてきました。問題なく今年も営業準備できれば良かったのですが、ここを管理するのは自分でなければいけないという思いもありませんので、もしこの湯が残るのであれば別の方に後を委ねるのも良いだろうと考えています。
いずれにしても、最終的な決定は来月初めに下そうと思っております。さまざまなご意見があると思いますが、ご理解いただけますと嬉しいです。