200年を経て現在によみがえる江戸幕府への献上品
古くから鮭の産地として知られる石狩市で、時を越えたプロジェクトが始まった。江戸時代、幕府への献上品にもされたという「寒塩引」。この味には、石狩の歴史も凝縮されている。
寒塩引の完成には約半年が必要だ。まずは10月頃に水揚げされるオスの鮭を3ヵ月間塩漬けにした後、水に浸して塩抜き。そしてさらに3ヵ月かけて干して仕上げる。石狩の寒風にさらされることで旨みが濃縮され、程よく脂が抜けたその身は手で裂けるほど柔らかく、しっとりとした仕上がりだ。
この手間暇ゆえに寒塩引は次第に廃れていき、近年ではごく一部の水産加工業者が手がけるのみとなっていた。その復活に役立ったのが、石狩市の村山家に代々伝わる古文書だった。
村山家は旧松前の豪商で、江戸時代から明治初期まで、石狩地方の交易を取り仕切る「場所請負人」を任じられていた。その時代から、石狩の寒塩引は高級品として江戸幕府にも献上されていたという。請負人制度廃止後、村山家は時の北海道開拓長官・黒田清隆の命を受け、寒塩引の製造方法を「北海海産物製法手続」という文書に記す。
2013年、地元の水産加工会社や石狩観光協会の役員たちによって「寒塩引研究会」が発足。古文書に書かれた製法に従い、2014年秋には100本の寒塩引を製造した。
200年の時を隔ててよみがえった寒塩引。試食した人からは「幅広い料理に使える」と好評を得た。同研究会では、今後も同様の方法で仕込み、石狩が誇る高級食材として、全国に向けて発信していくという。また、石狩市の特産品を販売する通販サイト「石狩大百貨」でも取り扱う予定。