「幸せな豚はおいしい」厚田に育ち、厚田を育てる命の輪
石狩市が誇るブランド豚「望来豚」は、石狩市厚田区にあるノース・ベスト・ファーム㈲が育てている。輸入穀物に頼らず、未利用の食品副産物や、牛乳・小麦・じゃがいもなど道内産飼料原料を乳酸発酵させたリキッド状の飼料を与えている。床材には石狩のライスターミナルのもみ殻を深く敷き、微生物で有機物を発酵・分解させるバイオベッドを作る。ここで豚はゆったり、のびのびと暮らしている。
こうして自然な餌と、清潔な環境で育った豚は、甘くあっさりとした脂、柔らかくジューシーな肉質を持った、上質な肉となる。味わいを大きく左右するのが脂肪の質だが、望来豚は脂の融点が低く、「舌の上でとろけるよう」との声も聞かれる。
飼育に手間がかかることから、生産量は決して多くない。札幌では駅前の百貨店でのみ生肉を購入できる程度で、一般にはほぼ流通していないのだ。しかし「地元で食べられ、支持されて初めて、この地でブランド豚を生み出す意味が生まれる」と語るのは取締役副社長・笠谷善八郎さん。実際、月に一度市内の全ての小中学校で給食のメニューになるなど、市民に親しまれている。命を育み、地元で命のバトンをつなぐ。「巡る」思いの中心にあるのが、この望来豚なのだ。