支笏湖のように透明で清らか。自然と人間の共同作業が生む淡水の芸術品
見るからに肉厚で張りのある魚体、包丁を入れると、鮮やかなオレンジの身。脂がほどよく乗り、濃いうまみとしつこさのない後味の良さを併せ持つ、その名の通り、気品のある味わいに驚かされる。「支笏湖のヒメマスは、ほかの産地と見た目も味も違うんですよ」と支笏湖漁業協同組合(以下「漁協」)の理事、白石一人さんは胸を張る。確かに、ある所で見かけた他産地の養殖もののヒメマスは小さく、身は白っぽかった。支笏湖の環境に、理由はあるようだ。
ヒメマスは、基本的にプランクトンを餌として成長する。だが、湖によっては、ワカサギなどの小魚を捕食することもあり、それが食味を落とすことに直結するという。支笏湖の透き通った水を見るに、魚にも混じりけのない澄んだ味わいを期待するが、あながち間違いではない。支笏湖にはワカサギが生息していないので、豊富なプランクトンだけを食べて、脂が乗った臭みのない身に育つのだ。
年によって漁獲量が大きく変動するヒメマスの資源量は、漁協が管理している。漁の方法は、ボートから仕掛けを湖中に漂わせる「釣り」だ。タックルは磯竿にタイコリールを組み合わせ、仕掛けは3本針とオモリ、集魚板を付けたシンプルなもの。早朝から湖面にひしめくボートは、漁期である6~8月の風物詩。出せる竿は1人7本まで、竿1本につき釣り針は3本までという規制を設け、漁のできる時間帯とエリアも制限することによって、乱獲を防いでいる。
「獲る」管理があれば「育てる」管理もある。親魚を網で捕獲し、採取した卵を受精させてふ化した仔魚をふ化場で育てて放流する「増殖」事業は、資源量を安定させる生命線だ。放流された稚魚は、4年間支笏湖の恵みを受け、40㎝ほどに成長して次の世代に命のバトンを渡す。受精から放流までは丸6カ月を要する。
これほど手をかけて成長を手助けしていても、支笏湖産のヒメマスが市場に出回る量はごくわずか。確実に出会うなら、支笏湖を訪れるといい。
支笏湖漁業協同組合 | |
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住所 | 千歳市支笏湖温泉番外地 |
TEL | 0123-25-2059 |
丸駒温泉旅館 | |
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住所 | 千歳市支笏湖幌美内7 |
TEL | 0123-25-2341 |
ヒメマス料理は、下記店舗・宿泊施設で提供
・支笏湖の商店街…御食事処 寿、お食事処 支笏荘、トントン食堂(いずれも千歳市支笏湖温泉番外地)
・支笏湖観光センター(千歳市幌美内番外地)
・支笏湖温泉…休暇村支笏湖、支笏湖第一寶亭留翠山亭、レイクサイドヴィラ翠明閣、しこつ湖鶴雅リゾートスパ水の謌(いずれも千歳市支笏湖温泉)
・丸駒温泉旅館(千歳市支笏湖幌美内7) ※時期によっては取り扱いのない場合あり