地元愛に守られてきた「幻の玉ねぎ」
生食では肉厚で柔らかい食感、火を通すと元来の糖度の高さから引き出される甘みが味わえる札幌黄。一説では明治10年に「青年よ、大志を抱け」で有名なクラーク博士の後任として札幌農学校に着任したウィリアム・P・ブルックス博士が持ってきた「イエロー・グローブ・ダンバース」がその原種と言われている。
明治に誕生して以降、昭和時代には道内のほとんどの産地で札幌黄とその系統の品種が栽培されるほどの絶頂期を経験。しかし、その後貯蔵性や玉の大きさ、収量性に富む後発のF1(交配)種に押され、生産量が激減し、「幻のたまねぎ」と称されるほどに。
そんな中、「生産性が悪くても本当においしいものを作り続けたい」という思いを持った地元農家や関係者によって細々と作られ続けてきたが、近年の「地産地消」運動などもあり、再び脚光を浴びるように。日本における玉ねぎ栽培発祥の地である札幌で生まれ、生産者たちの愛情で守られ、育まれてきた逸品なのだ。
札幌黄の流通時期は限られており、例年9月上旬に収穫を迎え、9月下旬頃~2月頃まで市内の一部のスーパーで販売されているほか、レストランでも提供されている。