徒然に 307
映画の中のラブストーリーは私たちにすてきな夢を見させてくれます。
でもそれ以上に心にしみて残るのは友情だったりしませんか?
この作品もそうですね、
昨年の2020年6月、世界中が大変な状況でした。キノも緊急事態宣言が解かれて...
ようやく営業再開した頃です。
この映画のご当地、フランスでも映画館が営業再開された深夜の先行プレミア上映で
熱狂の渦に包まれたのが「パリの調香師」でした。
ようやくスクリーンで映画が見れる、映画を待ちわびた皆さんの気持ちが伝わってきそうです。
世界最高峰で勝負してきた女性調香師が、あまりの多忙さに臭覚にトラブルが起きて一線を退いていました。
でもまた香水を作りたい、その夢は捨てられません。
人付き合いが苦手で気難しいアンヌはあまりに単刀直入に言葉を発してしまうので、
相手を傷つけてしまうことも多々あって、表には出さないけれど自分でもどうしていのか・・
そんな天才調香師アンヌの運転手になったのは、不器用だけれど人のいいちょっとお調子者のギヨーム。
彼も思ったことは言葉にするタイプなので、はじめはアンヌの高慢な態度に
「人に、どうそお願いします、ありがとう」が言えないのかと捨て台詞の残して
アンヌを置き去りにしてしまうのですが、また仕事依頼が。
もうだめだと思っていたアンヌから「仲直りよ」と。
水と油ほど違う、出会うはずのなかった二人。
自分に欠けているものを発見してゆき、今まで鍵がかかっていたアンヌの心の扉が少しずつひらかれてゆきます。
香りだけを嗅いで評価していた人間が、
香りの周りを見ていったら、触れていったら、それだけではないものに出会うはず。
「君はちゃんと目の前の人を見ているのか?」
とつけている香水だけで決めつけてしまうアンヌに放ったギヨームの言葉でした。
離婚してワンルームぐらし、娘と合う時間をとても大切にしているギヨームが
娘の誕生日に何を買ったらいいだろう、
以前服をプレゼントしたときに娘が気に入らなくて・・と相談した時に、アンヌは
娘の希望を聞いて機嫌を取るのではなく、あなたが娘に知ってほしいところへ
連れて行ってあげては?
ギヨームは娘に素敵なサプライズをすることに。
こうして二人はぶつかりながらもしだいに協力しあって再起をかける。
本当の信頼のなかからうまれる友情はとても目に見えないほど小さくて繊細で、
なんて素晴らしいのだろうって思います。
アンヌとギヨーム、崖っぷちのふたりがみつけた
「人生を豊かにする調合は一つじゃない」。
アンヌを演じるエマニュエル・ドゥヴォス、
キノで上映された作品ではどちらかというと難しい人生歩む重たい感じの役柄が多くて、今回のように、気難しいけれど軽やかなコメディの役柄は初めてだったので驚きましたが、絶妙の調合が素晴らしかったです。
アンヌが大好きな香りは、幼いころ使っていた石鹸の香り。
ギヨームは、お父さんが芝刈りをしていたときの草のにおい。
なんだかとてもわかりますね、
雨が大地にしみてゆくときの草木が放つ
雨の香りも大好きです、
しんしんと降り積もるサラサラな雪のピーンと張り詰めた空気の匂い、自然と調和した香りは人の記憶の中でずっと宿っているのかもしれませんね。
横道にそれていろいろな記憶が蘇ってきそうです。
★「パリの調合師」2月26日までの上映です。
★明日からは愛情と友情が年月をかけて融合したようなとても素敵な再会
「43年後のアイラブユー」も始まります。