徒然に 294
人生そんなに甘くない、ちょっとコミカルなご夫婦のお話。
お二人はロシアでは名のしれた声優夫婦。アメリカやヨーロッパからやってきた映画たちをロシア語に吹き替えて新たなロシア版映画が誕生。
この国のひとたちははみんなその映画を楽しんでいたのですね。
そんなお二人が1990年イスラエルへ移住することに。...
第二の人生、夢の新天地、さぁ頑張らなくちゃ・・と意気揚々としていたのですが
なんとここでは声優の仕事は必要ないようです・・・現実は厳しい。
さぁ、ここからは長年連れ添った夫婦がむかえた分かれ道。
現実を見据えて前向きな妻と、過去の栄光が邪魔して踏み切れない夫、
迷子になった二人は微笑ましいほど暴走して・・
居場所を見つけるってむつかしい。
今まで銀幕の世界にいたふたりが、スクリーンから抜け出して向き合ったとき、
誰かではない自分を、「自由に生きろ」と映画の神様が微笑んだ。
大作ではなくてこの手のひらでそっと包みたくなるような小品のよさが
私たちの心をほっこりさせてくれます。
迷子になってやってきたところが映画館。
映画は迷った人の心の行き先をそっと教えてくれるのですね。
エフゲニー・ルーマン監督は実際に子供時代に両親とともに
ロシアの鉄のカーテンの崩壊とともにイスラエルへ移住したというまだ40代になったばかりの若い監督です。
そんな子供時代には海賊版のロシア語吹替版レンタルビデオをたくさん見ていて
この映画は両親たち、親世代への贈り物のようです。
ちなみに監督は是枝裕和監督作品が大好きで全部見ているけれど、なかでも
「ワンダフルライフ」は何回みたかわからないくらいお気に入りの1本だそうです。
★「声優夫婦の甘くない生活」只今上映中です。
※余談ですが最初と最後にでてくるスイッチの存在が気になって、ふと佐藤雅彦監督の「kino]を思い出したり、
アキ・カウリスマキ監督の「浮き雲」がひさしぶりに見たくなりました。