徒然に 275
「作品については何も述べない その必要があるなら失敗作だ
誰にでも理解できる話を書きたかった
子供でもわかるような簡潔な物語を
それが真実を伝える方法だ...
私は悪い時代に生まれた あなたは?
世界が怪物に侵略される話は聞きたくないはず
私も時代が違えば人々が求める小説を書いただろう
だが家畜の物語で怪物の話をすれば
皆も耳を貸し 理解するはず
未来が危ういからこそ よく行間を読んでくれ
“荘園農場のジョーンズ氏は鶏舎に鍵をかけ・・・・“」
鶏や豚の大きな鳴き声とともに、窓際で遠くを見つめやがてタイプを打ち始める男・・
そしてスクリーンに大きく 「Mr, Jones」と映画の原題が浮かび上がる。
映画の冒頭では「1984」が有名な作家、ジョージ・オーウェルがこれに先行して書かれた小説「動物農場」の一節が引用される。
動物たちが登場して、豚は独裁者として描かれ、ロシア革命の指導者レーニンの死後、スターリンが政敵を追放し粛清裁判をおこなう、
恐るべき独裁体制を固めてゆく過程が透けて見える・・この小説が出版されたのは終戦後、1945年8月のことだった。
完成していても出版されるのは終戦をまたなければならなかった。
さてオーウェルから始まったこの映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」は、
まだ若きジャーナリスト、ガレス・ジョーンズが思った疑問から動き始めます。
1933年、世界恐慌が吹き荒れる中、なぜスターリンが率いるソビエト連邦だけが繁栄しているのか?その謎を解くために単身モスクワへと向かい、当局の監視の目をかいくぐり、その答えを見つけるべくウクライナへ向かうことに・・
そこで見たあまりにも壮絶な現実
歴史の闇に隠されていた衝撃の真実がスクリーンに蘇ります。
無力な一人の人間が立ち向かっていったその姿から見えてくるのは・・
その時彼は27歳という若さでした。
終盤ではジョーンズとオーウェルの出会いのシーンが。
同時代を生きた二人の、ジョーンズからオーウェルにバトンが渡されたように思えるシーンになっています。
連日多くの皆さんに見ていただいています。緊張感で思わず体に力が入ります。
1本の映画がわたしたちに問いかけてくる、
そこには映画が誕生するまでの長い道のりがありました。この続きはまた―