徒然に 273
20世紀最高のバッハの演奏家と言われているジョアン・カルロス・マルティンス。
リオパラリンピックの開会式で行われた彼の国歌演奏の模様は、ハンディキャップを持った両手で奏でられた美しい旋律に世界中の人たちを魅了しました。
彼の映画を作ろう、その映画化権を巡っては、当初クリント・イーストウッドが映像化を熱望し、その話は進んでいたのですが、
プロデューサーは直談判で熱い想いをジョアン本人にぶつけました。...
「この物語はブラジル人こそが映画化すべき」と。
こうして映画化権を獲得したそうです。
しか製作にあたっては当時のブラジルの経済状況は危機に見舞われていて、
資金集めは難航し、限りある予算をどのようにうまく使っていくか、
知恵を絞りながらの撮影だったそうです。
こうして出来上がった映画は本国ブラジルで公開されるとスマッシュヒットを記録、
若くして世界的に活躍していたピアニストを襲った不慮の事故、病、その苦難を何度も乗り越えてゆく姿は、今苦難のさなかにいるブラジルの人達の心そのものだったのでしょう。
病弱だった幼少期、ピアノと出会い天才と呼ばれ、米音楽会の最高峰カーネギーホールで鮮烈なデビューを飾った20歳。
音楽が全て、絶頂期にいた彼を襲った不幸・・しかし彼は「私は不死身だ」と自身に言い聞かせて音楽の道をあきらめませんでした。
バッハの名曲とともに描かれる感動の実話です。
映画の演奏シーンは全てジョアン自身の演奏によるもの、迫力に満ちた想いの結晶です。