徒然に 267
少しずつ秋の香りがしてきましたね。ただ今新しいムービーラインナップの作成準備に入っていて、まもなく秋から初冬にかけての作品もご案内できるかと思います。キノのフライデーシネマも充実してきましたよ、どうぞ楽しみに。
「白痴」「喜びも悲しみも幾歳月」35ミリフイルム上映も無事終了、スタッフと「お疲れさま!」と言葉をかけあいました。
でもこれで終わりではなくて、つないだフイルムを小巻のものへと戻すべく、バラシというのですが、只今編集作業中。...
16巻と18巻、次に上映されるのはいつかわかりませんが、
その方のためにも、きれいに丁寧にフイルムを缶におさめていきます。
デジタル上映に慣れてしまっていたので、こうして手で触れ、目で確認してゆくという具体的な作業は新鮮でもあり、
人間が身体で感じてゆくことがだんだん失われていきそうで、
効率が悪いとか、無駄とか言われそうな手間ひまかけたアナログ的なことはやはり大事にしたい、そんなふうに思いました。
先日、
「ユペールが好きで、もう2回めなんです」と恥ずかしそうにパンレットを買われた時にお話を。
「エル ELLE 」を観てびっくりして、すごくカッコいいって思ったんだそう。それからいろいろ見るようになったのだと。
ユペールの年齢にもびっくりで、60代後半。私のおばあちゃんと同じくらいで・・と。
お話を伺うと、なんだか嬉しいです、
今回の「ポルトガル、夏の終わり」は
この世のエデンと言われるほど神秘的な、ポルトガルの世界遺産の町シントラにやってきた家族のお話。
女優のフランキーには人生の時間があと僅かしか残っていない。
バカンスと偽って家族や親しい友人たちを集めて休暇を過ごすことに。
夫のことは大丈夫と思ったのか、先の見えない息子のことなど心配事には彼女なりに筋書きを立てていたのですが、どうも思うようにはいかないもの。
家族はそれぞれに悩みを抱えていて、様々な糸が絡み合って、
エンディングではじめて全員が会して迎えた
西の果ての海に沈む夕陽・・
絡んでいた糸がすーっときれいに繋がっていくような・・
悲しみ浸って泣いたり、恐がったり、そんなことには屈しない。逃げたりしない。
淡々と自分の人生を受け入れて、同じように死も人生の一部と思っていた。
でもある瞬間、自分のいない世界を見てしまった。
その時はじめて彼女の心が小さく震えている、
そう感じた。
イザベル・ユペールは偉大なり。あまりにも遠くて見えないような感情をわたしたちに感じさせるのだから。
思わぬ感動が不意にやってくるラストシーンは必見です。