徒然に 264
「自分もそうだったように、その時わからなくても、あるとき、気づくものがあるのが映画だと思う。
見てすぐ全部理解できる映画は、すぐに忘れてしまう。すべてわかって、手に入れてしまうと、とっておく必要がなくなるのだから。
だから、なにか引っかかるものがあるという、ある種の違和感は、実はすごく大切で、その違和感こそが共感に繋がると思うんです」と語っていた李相日(リ・サンイル)監督。
その気持ちわかりますね、見終わって喉元に小骨が引っかかっているような違和感だったり、呆然として荒涼たる砂漠に投げ出されたような気持ちだったり、ゆっくりと回想してみても、たどり着けない大きな穴が体いっぱいをしめてしまったり・・。
「悪人」もそうでした。「怒り」もそうでした。
ずっとずっと考える。考えていた、この監督の作品はそんな思いでいっぱいになる。
「悪人」と「怒り」の間に位置するのが、
「許されざる者」。
今回キノでようやく上映することができ、監督をお呼びすることが実現できた念願の作品です。
舞台は1880年、まだ未開拓だった北海道の荒涼たる大地。
居場所を探しそこにたどり着いた者たち、
ここでは許されると思ってしまうような傍若無人ぶり、生きることの野望。
生まれたときから自然界に敬意をはらい、自然とともに生きてきた者たち。
この大地で生きることは過酷だ。
しかし心を寄せ合えばそこには温かい感情が生まれる。
人はなぜ生きるのか、
善とはなにか、悪とはなにか、境目など遥か超えてしまうような世界で
人は誰のために生きるのか
無言の魂が 語りかける。
主演を努めた渡辺謙さんは
「許されないものを ひとは大なり小なり背負って生きているのではないだろうか」と
映画を撮り終えたとき、お話されていたことが印象的でした。
★「許されざる者」8月22日(土)~27日(木)シアターキノでの上映です。
22日(土)23日(日)15;00~上映後に李相日監督来館!トークがございます。
★23日(日)近代美術館にて「北海道映画文化の未来会議」
12:00~「許されざる者」メイキング上映と監督たちゲストによるトークがございます。
オール北海道ロケ激闘の80日間、これを見ると、役者たち、スタッフたちが映画魂をかけて本物の映画を撮ろうと
果敢に立ち向かった姿が感動とともに伝わってきます。
妥協しないということは、ここまで人を追い込み、自身をも追い込んで、100%ではなく120%を目指し、
一体となった撮影隊の感動と成長の記録でもありました。
そのあと、北の大地に暮らし、道内で映画祭を定着させてきている方たちのシンポジウムも。
文化が明日を育てる、そんな語り場はまさしく未来会議、
ぜひご参加ください。
詳しくはキノのHPニュースをごらんください。
★まもなく「許されざる者」ロビー展示が出来上がります。
いまスタッフが頑張っています。