徒然に 263
久しぶりにミニシアターらしい映画、というのでしょうか。小さな街で生まれた小さな映画、殆ど知られていない役者さんたち、でもそれだけに真っ白のキャンバスのようなスクリーンに、様々な色合いが映えるのですね、とてもあたたかい気持ちになる。
相手を思い、自分の気持ちが正直になれるように時間をかけて書く手紙。
何日かかけて届いた手紙は封を切る時、緊張しますね、
何十年もの間会っていなかった友人からの手紙だったりしたならば、なおのこと。...
良い知らせ・・、何か悪い知らせだろうか・・
そんなことを思いながら読み始める。
行間から様々な思いを読み取りながら、
どう返事を書いたものかと考え始める。
その書き出しがとても大事ですね。
「ぶあいそうな手紙」はそんなことを思わせてくれます。
ルネストは母国のウルグアイからブラジルの南部のポルトアレグレにやってきてもう46年にもなる。
息子は独立して一人暮らし。頑固で融通がきかなくて、本が大好き・・歳のせいもあり目が見えなくなってきた。息子はそんな父を心配するのだけれど、エルネストは愛情表現が苦手なせいか、気持ちをうまく伝えらえない。
ある日、母国のウルグアイから1通の手紙が届く。
若かりし時の友人の妻からのものだった。
読もうとしても文字がかすんで読めない。
そんな時に出会ったのが23歳のビアという破天荒な女の子だった。
何故かエルネストはビアの前では素直になるのだ、
そうして手紙を読んでもらい、返事を書くことに。代筆するビアにエスレストが
「拝啓・・」から始めようとすると
悲しみに沈んでいる人にそんなぶあいそうはない、やさしい愛情を込めて
「親愛なる・・」から始めましょうとアドバイスされ・・
もう人生は終わってゆくだけ、と思っていたエルネストは昔からの友人への手紙を通して、
若いビアとの交流から、最後の人生をどこで、誰と過ごしたいか、
新たなはじまりへと、思いが変わってゆくのです。
じっくり時間をかけて言葉を紡ぐ、急ぎすぎない時間の使い方は
ゆっくりと受け止める心を用意してくれるのかもしれません。
あらためて手紙っていいな、と思いました。
パンフレットの始めのページにはアナ・ルイーザ・アゼヴェート監督からのメッセージがありました。
「この映画は今年4月にブラジル、アメリカ公開が決まっていたのですが世界中に拡大したパンデミックのために公開延期になってしまいました。
そんな中で世界のどこよりも早く日本公開が決まりました。
私はこの映画で「あなたはどんな老いをいきたいですか」と問いかけたいと思いました。
若い方にはまだまだ「老い」なんて先の話と思うでしょう。
けれど「あなたは本当はどういきたいですか」という問いではどうでしょう。
映画の中でエルネストとビアは変わります。それはそれぞれの発見の可能性なのです。
南米の南で作られた映画が遠い日本で、皆様の心に届くことを願っています。」
カエターノ・ヴェローゾの「ドレス一枚と愛ひとつ」、心にしみる歌声がエルネストの心をおしてくれる・・
「ぶあいそうな手紙」は8月21日までの上映です、