徒然に 255
昨日お客さから「1日おくれてしまったけれど、おめでとうございます、お誕生日でしたね?」と言われて、「今年はいろいろなことがあって静かに迎えようと思っていました、覚えていただいたのですね、ありがとうございます」そんなお話をしていました。
キノは7月4日、28歳になりました。1年、1年、こうして迎えられることができて、ありがたいな、と思います。
その後お客様が「映画、とっても面白かったです。見れてよかった」と笑顔で帰っていかれました。
「コリーニ事件」、皆さんの満足度がとても高くて、見終わったあとに「原作本はないの?」と聞かれるのですが、出版社にはいま在庫がなくてとても残念です。...
先程も「とても良かったので今度は子どもを連れてもう一度見ます」とおっしゃっていただいたり。
デビュー作「犯罪」がベストセラーとなってドイツを代表するフェルディナンド・フォン・シーラッハは自らも弁護士として活躍していて、経験した事件をもとに執筆している初長編小説が原作にあたる「コリーニ事件」です。
舞台は2001年のドイツ、ベルリン。弁護士になりたてのカスパーがある殺人事件の国選弁護人に任命されるところから始まります。
だが被害者は彼の少年時代からの恩人でした。動機については一切口を開こうとしない被告人でしたが、事件を調べてゆくうちに、1丁の特別な銃の存在から、戦後の歴史の中で封印されてしまった、ドイツ史上最大の司法スキャンダルへと発展していきます。
果たしてこれは冷酷な殺人事件だったのか、
審理をめぐるスリリングな法廷劇としても、
また戦後ドイツが抱えていた法の落とし穴をあぶり出した重厚な社会派作品としても
見応え充分。
原作がきっかけで、作品が発表された数ヶ月後にはドイツ連邦法務省に調査委員会が設置されという、まさに国家を揺るがした小説だったのですが
シーラッハの祖父はナチス中枢にいたということもあり、ナチスの戦争責任ということを真正面から描くにはただならぬものがあったのではと思います。
監督のマルコ・クロイツバイントナーは
原作の“正義”というテーマに惹かれたと語っています。
「具体的にいえば我々がふだん正義と呼んでいるものが本当にそうなのか、ということについて。この作品は”良心“についての物語で、正義のために立ち上がることが人間として最も根源的な義務であることを示している― そして、いつだってその闘いには意味があるということも。」
被告人を演じるのは名優フランコ・ネロ。
表情だけで表現しなくてはいけない重要な役、できるのは彼だけ。そんな思いで監督は
フランコ・ネロのご自宅へ行き、お話をし、その熱意と、作品の持っている重要性で
出演が決まったのだそうです。
※ロビーには憲法学者の木村草太さんの文章も展示しています。映画の後にじっくりとご覧ください。