徒然に 243
先日夕暮れ時に円山の桜を見ながら静かにお散歩。
そんなとき頭のなかでは口ずさむようなメロディがくるくる回っていたり、
不意に映画の1シーンが思い出されて、なぜ突然?と思いながら顔が緩んでしまう、
そんなことってありませんか?...
女のこが男の子にお土産にと安手のワンピースをプレゼントされて着てみるのだけれど
その時は不~という感じなのだけれど
あとでゴミ箱にぽいっと捨てちゃう感じ、その瞬間がなんともなんとも良くって。
クリーブランドのおばさんのところに行ったり、湖に行ったり、何があるともなく。
ランストシーンでは3人がちりじりに、なんとも飄々とした感じで終わる
その佇まいが思い出されて、嬉しくなってきました。
一体何の映画の話?と思いますね、
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のシーンが切れ切れに思い出されて・・
ジム・ジャームッシュが31歳の時の作品です。
80年代、カンヌ国際映画祭で新人監督のカメラドール賞受賞して、一躍世界中が注目した作品です。
日本でもとてもヒットして、この映画の出現に湧きました。
ジョン・ルーリー演じるニューヨークで暮らすハンガリー出身のウィリーのもとに、
クリーブランドのおばさんが病気になってしまったので
ブタペストに暮らしている
16歳の従妹のエヴァを10日間だけ預かることになるのですが
なんとなくのその日ぐらしのウィリーは気乗りしない。
でもエヴァはジェイ・ホーキンスの曲をカセットで流しながら・・
何が起こるということもないのだけれども飄々とした物語が始まります。
実はこの映画、ヴィム・ヴェンダース監督がアメリカで
「ことの次第」という映画を撮っていた時、
ジャームッシュは助監督をしていたのがきっかけ。
撮影中この作品はトラブルに見舞われて一時中断してしまい、
そのときにヴェンダースがジャームッシュにフイルム40分ぶんをプレゼントしたのです。
それをもとに30分の短編を作りました。
それがこの映画の前半にあたります。
でもお金がないので工面してその後2年かけて後半部分を撮ったのですね。
出演している人もみな同じなのですが、そんな2年もの空白があったなんて全く感じられません。
キープする持続力、役者さんも監督もすごいと思いました。
映画にはシーンのごとに10秒間の黒味が入るのですが、
モノクロームの映像の1シーン1シーンが写真のように美しくてカッコいい。
弦楽四重奏と三拍子のロック、そしてラストシーンのなんともとぼけた顛末に、
どうしてこんなに心が踊るのでしょう。
当時は、この映画を観て自分でもカメラを回してみたいと思った方は多かったのでは?
そんなジャームッシュも今は60代に。信じられないくらいですが彼の映画の感覚はいつもジャームッシュ印、変わりません。
詩を書くのが大好きなバスの運転手と家族のお話
『パターソン』も
なにげない日常が愛おしくなります。
愛犬マーヴィンの小さな仕業の数々、特に毎日のある時間、大急ぎで出向いての左足のキックは・・・!
その後の何事もなかったようなどこ吹く風のマーヴィンの表情には
どんな役者さんも叶いません。ぜひご確認を。
何気ない日常が恋しいこのごろ、なんだか心が筋肉痛になっていませんか?
そんな時におすすめです。
心も体も風通しが良くしてくれますよ。
先日資料を整理していたら「コーヒー&シガレッツ」のチラシがでてきて、
こちらもラストに向けて愛おしくなるような時間がながれていて、チラシを見ているだけで
ほっこりした気持ちになりました。
記憶を紐解くと終わりが見えなくなりますね、
★出番を待っている映画たち ジャ―ムッシュの「パターソン」、
再開の日が待ち遠しい。