徒然に 241
「映画館で見る映画が好き」とおっしゃっていただいた。
上映作品のタイムテーブル表のボードの片隅に
「応援してます」というメッセージカードがさり気なく貼ってあった。
きっと映画を見て帰られる時に貼ってくださったのですね。...
「頑張りましょう」「乗り切りましょう」と小さく笑みを浮かべてつぶやいてくださった。本当にありがとうございます。
シアターキノは4月20日~5月6日まで休館になりましたが
再開目指してスタッフと少しずつ上映作品の準備をしています。
明かりのないロビ―では映画たちが「まだぁ・・?」としびれを切らしているようです。
映画があって当たり前のように日々送ってきましたので、この特別な休日に
映画たちも映画館も、いちばんはお客様たちも戸惑い気味ですね。
そんな時、心も体も緩めてお家で見られる大好きな映画をセレクトして見るもの楽しいですね。
先日は、しばらく来れないからと全作品のパンフレットを買っていかれた方も。
元気をもらえる映画たち、みんなそれぞれ違って、
それが楽しい時間です。
●暗闇の中で出番を待っている映画たち,
ご紹介します。
こんなに愛に、愛を求めて孤独な心を抱えている、
そんな作家の作品はそう巡り会えない気がします。
心が苦しくなるほどなのに、ある瞬間それがはじけるように溢れてくる。
この人はもうすでに人生の真実に気付いているのかもしれない、そんな抽象的な思いにまで至ってしまいます。
孤独なことが悲しいことではない、孤独であることはそっと手のひらのあたたかさを感じた時に、そのぬくもりをこの上なく愛しいものに感じられる、そんな豊かさを持っている。
まだ映画作家としては10年の道のり。
わずか19歳でカンヌ国際映画祭で脚光を浴びて「マイ・マザー」で鮮烈な映画デビュー。
20代、「Mommyマミー」でカンヌ国際映画祭審査員特別賞をゴダールとともに授賞。
この作品はミニシアターで大ヒットしました。
彼の映像、音楽、衣装・美術のセンスは天才的で、この映画ではオアシスの「ワンダーウォール」を流しながら今までのスクリーンの画面サイズが正方形だったのに、
少年が手をひろげてゆくと画面が横に広がっていってシネマスコープの画面に変わる。
あの、世界が広がった瞬間の、私たちが共有した感覚は忘れられません。
「たかが世界の終わり」ではカンヌ・グランプリに輝き、
発表するごとに作品世界を成長させていった彼がついに、その集大成と位置づけた作品が誕生しました。
グザヴィエ・ドランの「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」、どうしてもキノのスクリーンで上映したかった作品です。
6歳から子役として活動していたドランが
「この作品は僕自身の経験が物語のヒントになっている。
劇中には、2組の親子が登場するが、
母と息子、それは僕がこれまで描いてきたテーマだ。
『ジョン・F・ドノヴァン』はそのテーマの集大成だと思っている」と語っている。
ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、キャシ―・ベイツという実力派に
キット・ハリントンと「ルーム」の天才子役ジェイコブ・トレンブレイが主役を演じる。
ドランはこうも語っています。
「脚本を完成させるまでに、5年の時間がかかりました。
ずっと思い描いてきたものを、素晴らしい俳優たちとともに作品にすることができたことは、満足という言葉では言い表せないほどに幸せです」と。
★少年の“秘密の文通”によって明かされる美しきスターの死の真相―
「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」
キノ再開とともに上映します。