徒然に 235
場内はまるで東大駒場キャンパス900番教室さながら。言葉のぶつかり合いが熱い。
これが1969年であることを忘れてしまう。
頭の中を電流が走るように言葉が刺さってくる。
叩きのめすほどの情熱は、文豪の明快で真摯な言葉の力に、ぶつかりながら...
新たな光を発見してゆく。
「俺の作品は何万年という時間の持続との間にひとつの持続なんだ。
僕は空間を意図しないけれども時間を意図している。そして解放区というのは
空間を意図するものならだね、それがどこで時間に接触するかといいうことを」
そして
「興味を持ってあなたに聞きたい。」と三島は問いかける。
「持続じゃないでしょう、むしろ、可能性そのもの空間のことでしょう。
おそらく自由そのもの
ところが人間というものは自由に直面すると
そこで敗退してしまうという
そういう文明の習慣が 身についてしまったということでしょうね。」と芥正彦。
東大全共闘1000人を超えるなか、単身、ショートピース4箱を携えてやってきた
三島由紀夫。
少し遅れてやってきたのは赤ん坊を抱いた東大全共闘随一の論客として知られる芥正彦だった。
この赤ん坊の存在が張り詰めていた緊張の糸はほぐし会場の空気が変わった。
「政治思想においては私と諸君とは正反対だということになっている。
まさに正反対でありしょうが、ただ私は今までどうしても日本の知識人というものが
思想というものに力があって、知識というものに力があって、それだけで人間の上に君臨しているという形が嫌いで嫌いでたまらなかった。
全学連の諸君がやったことも全部は肯定しないけれども、
ある日本の大正教養主義から来た知識人のうぬぼれというものの鼻を叩き割ったという功績は絶対に認めます。」
学生たちからは思わず笑いがおこったり、拍手がでたり。
みんなこんな展開は予想していなかっただろう。
旧態依然とした知的価値観を壊す。
三島は自分の考えていることを丁寧にわかるように相手に伝えようとする。
その純粋な思いと、学生たちの純粋な思いが交差してゆく姿に―
●「三島由紀夫VS東大全共闘 50年後の真実」がはじまり、1週間がたちました。
若い方からその当時の方まで、
2020年 今、わたしたちにとって 三島由紀夫とは?