徒然に 232
文字の書かれた紙をくしゃくしゃっと。丸めたり折ったり、その紙をていねいに広げて
コピーする。
すると文字はかすれていたり、微妙なグラデーションを作っていたり...
文字が生きものに変化して、美しい生命体になった。
そんな心ときめく指先からうまれる魔法が
新しい本の表紙を飾る。
「つつんで、ひらいて」は、本そのもと向き合い、
「本を装幀する」仕事を生業にしてきた
菊池信義の「ものづくり」の現場に密着します。
作家が文字で綴った作品を、紙を選び、文字を選んで
コトバにする、
紙とインクを合わせてみる、
表紙が決まる。
印刷所では、いろいろな役割をする機械を紙は通ってゆく。
その流れが人の手のような美しさで、
もっとスロ―モーションで眺めてみたいと思うほど。
こうして1冊の本は出来上がる。
生まれたての本の表紙に触れ、なぞり、ページをめくる。
文章を読むだけではない楽しさに没頭する、たのしさ。
中身を覆う皮膚のように、赤ん坊がくるまるはじめての産着のように、
「言葉を、目から手へ、そして心に届ける仕事」。
菊池は言う。
「ウチのおばあさんは、こしらえることを“こさえる”といっていた、
デザインってそういうことだと思うんですよ。
“こさえる”なんですよ。
1万点もの(デザインの仕事を)やってきたけれど、やればやるほど自分が空っぽになってゆく気がする。
あまりにも人間の心のありようの多様さを知ったせいか・・
でも心とはそういうものなんじゃないかな。」
★キノロビーには シンプルで斬新なポスターが登場です。
手に触れて、ひらいて、めくる。 どう展示したらいいかと思案中。
「つつんで、ひらいて」3月14日(土)~20日(金))の上映です。