徒然に 229
昨年の5月カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドルール賞を受賞したポン・ジュノ監督は
ソン・ガンホにトロフィーを捧げ
「偉大な俳優がいなければ、この映画は撮れなかった」とお話されたそうです。
そして今年のアカデミー賞での快進撃、これは嬉しい事件でした。
キノでは、ポン・ジョノ神話はここから始まった!
そんな思いから
「殺人の追憶」を中心に「ほえる犬は噛まない」「母なる証明」
初期の3作品を特集することに急遽決めました。
ポン・ジュノ監督がまだ助監督の頃、イ・チャンドン監督の「グリーンフィッシュ」にでているソン・ガンホさんに魅了されラブコールを送り、
デビュー作の「ほえる犬は噛まない」を見たソン・ガンホさんは
普段はあまり笑わない方なのにこの作品を見て笑い転げて、監督に電話してきたそうです。
その3年後、ソン・ガンホ主演「殺人の追憶」が誕生(03)しました。
ここからポン・ジュノ神話が始まったのです、あの衝撃は忘れられません。
人間臭い人情味がふっと笑いを誘い、なのにどこまでも深い社会の闇が最後まで私たちを惹きつけて離さない。
実際の事件を扱っていて、当時まだ事件は解決していませんでした。
しかし昨年真犯人が見つかり、韓国では再び話題になっているそうです。
母性の強さと怖さ、母と息子の張り詰めた関係に震えました。「母なる証明」(09)。
ほんとに怖かった。
はじめてみた「ほえる犬は噛まない」(2000)はふしぎな面白さに満ちていました。
行ったり来たり、追って追われて、
ペ・デュナがすごく良くて、この女優さんには赤ちゃんみたいな無垢さがあって、
それ以来ファンになりました。
日常の中の非日常、悲しみの後の喜びを、
どうやって犯人を捕まえたのではなく、どうして犯人を捕まえられなかったのか、
刑事の無能さよりも、時代の問題を描いたと語り、
「私の映画には冴えないキャラクターが欠かせない。
「ほえる犬~」のイ・ソンジェとペ・ドゥナ、「殺人の追憶」の情けない刑事たち。
手に負えない事件に巻き込まれて、深刻な場面なのに、
スクリーンに映し出されると面白い状況になる」と。
不思議とおかしくなるこの感触はポン・ジュノ監督の大事なところですね。
そして、アカデミー賞でも有名になりました
「もっとも個人的なことがもっともクリエイティブなこと」
師(スコセッシ)の教えを心に刻み、
柔軟に果敢に、社会を微細に見つめる眼差しから生み出されてゆく世界は
もっとも韓国的なものが世界共通のこととして、もっとも普遍的な共感を呼んでゆく。
ソン・ガンホさんは
「慣れないことに挑戦するのは(俳優として)怖いが、作品の斬新さがその怖さを打ち消してくれる」と語りました。
ポン・ジュノ=斬新、
20年近い時間を巻き戻してみると、映画たちはどんな風に見えてくるのでしょう。
ジャンルを越境し、より進化してゆくポン・ジュノの世界
いままでも、これからも、とても楽しみです。
★「殺人の追憶」3月7日(土)~13日(金)・18日(水)・19日(木)
「母なる証明」3月14日(土)~19日(木)
「ほえる犬は噛まない」3月14日(土)・15日(日)・17日(火)
★3月11日(水)は18:20~「殺人の追憶」のあとに北大の玄武岩先生と芳賀めぐみさんによるゲストトークがあります。