徒然に 228
「今日は上映していますか?」とお問い合わせが多く、
「急きょ20時以降の作品の上映は今週お休みになりましたが、朝から夕方までの作品は上映していますよ」とお話すると
「じゃあ、今日行きます」「明日行きますね」と弾んだ声がかえってきて、わたしたちも嬉しくなります。
キノに映画を見に来てくださった皆さん、お問い合わせをいただいている皆さん、大変有り難うございます。
私たちにできる限りのことをと、
ロビーのドアやトイレ、手すりなど、また、
お渡しする整理券も、
毎回除菌のため拭いてなど、できるだけ清潔に、とスタッフみんなで心がけています。
しばらくの間ブランケットの貸し出しはお休みします。
みんな一人ひとり自分の体を気遣い、しっかりおいしく食べて、ゆっくり眠って、
キノの合言葉は 免疫力をつけて乗り切ろう。
免疫力の付け方は人それぞれ、体を緩めて、美味しいなと、食事をするのがなによりかも。
さて、フィンランドから届いた映画は、仕事一筋で家庭を顧みなかった老画商が
署名のない絵画に魅せられて、これはもしや19世紀ロシアの国宝級と言われる
イリヤ・レーピンのものでは・・・と人生最後の大勝負に出るお話なのですが
疎遠だった娘と孫に会ったことで、自分がいかに自分のことしか考えていなかったのか、
娘たちの苦労をずっと知らなかったことにようやく気づき
年の離れた孫が相棒となって、
幻の名画に込められた真実へと近づいてゆくのですが・・・
この絵はどこから来て、なぜ署名がないのか・・その真実にたどり着いたとき
勝つことだけではない人生があることを、
もっともっと大切なものがあることを
それを幻の名画が教えてくれる・・そんな感動をお届けまします。
劇中に登場するのはフィンランドの国宝級の絵画や美術品の数々、
ロシア領時代の趣を残したままのヘルシンキの町並みはしっくりと落ち着いた美しさ、
そして老画商が毎日のように通うベーカリーは
1852年創業以来営業しているというヘルシンキ最古の
ベーカリー「エクベリ」だそうです。
オールドファッションなシナモンロールやブリオッシュは特におすすめとのこと。気になりますね、
監督は「ヤコブへの手紙」や「こころに剣士を」のクラウス・ハロ。
「ヤコブへの手紙」では、盲目のヤコブ牧師のもとに恩赦を受けてやってきた女性の物語で、
手紙によって固く閉ざされていた心が紐解かれれてゆく、感動のラストは号泣でした。
「こころに剣士を」では自由に生きる事ができなかった時代に、勇気と希望を見つけてゆく子供たちの真っ直ぐな眼差しが忘れられません。
そして、勝つことではなく負けることでいちばん大切なものをえた
世界の片隅で生きる人々を描いた
「ラストディール 美術商と名前をなくした肖像」へとつながってゆきます。
見初めた幻の名画がなにを描いていたのか、それがこの映画の核になっているような・・どうぞお楽しみください。