徒然に 225 (つづき)
アヌークは、はっとするほど美しく、それでいて愛らしく上品だ。
ジャン=ルイのユーモアと人生観に触れたとき、彼はどれだけのことを経験してきたのだろうと思った。
私は、ジャン=ルイの人生のなかで培ってきた人間性を感じることができて嬉しく思った。...
これまでの経験すべてが、彼の栄養となっているのだ。
『男と女 人生最良の日々』では、ジャン=ルイのとなりでアヌークも輝いている。
彼女はジャン=ルイの幸福の女神であり、記憶やエネルギーの象徴なのだ。
この作品で描かれる二人の再会は、一組の男女の姿を映し出している。
男は、これまでたくさんの女性を愛し、人生を楽しんできた。不誠実で、世界中のありとあらゆる欠点を抱えている。この男は、いつまでもユーモアと遊び心を忘れず、どんなことも恐れない。
一方、女は相手への忠誠と真実の愛を信じていた。
死はこの作品には含まれない― あるのは希望だけだ。
こんなに美しいジャン=ルイとアヌークを見たのは初めてだった。
最後にふたりが一緒に歩いて去ってゆく様子は幸せでもあり、感動的でもある。
まるでふたりの冒険家を見ているようだった。
撮影しながら、私は自分の目がうるんでいるのに気づいた。
・・・
愛とは時間の芸術。その時間は誰もが持っている。
そこには、ありとあらゆく美しさが潜んでいる。
私の作品の主役たちに与えられた時間は、スクリーンのなかでの1時間ほどしかないが、
そのひとときは最高のものになる。
そう思ったから、ヴィクトル・ユゴーの言葉を引用した。
「最良の日々はこの先の人生に訪れる」
・・・
※映画のパンフレットより、クロード・ルルーシュ監督のお話の一部を抜粋)
お客さまが「いまだから、わかる気がする」とおっしゃった。
人生はどこまでも不完全、だからこそ美しいのかもしれません。
フランシス・レイの遺作となった音楽とともに贈る
「男と女 人生最良の日々」、はじまりの物語です。